ワクワクで成功できるという、エイブラハムの教えを心理学で補足説明します。

願望実現や引き寄せの法則で有名なエイブラハムの教えでは、ワクワクすること、心が喜ぶことをやっていれば成功すると言われます。そう考えると良い気分になるけど、本当にそれでいいの?!と疑問に思いませんか? 仕事でもスポーツでもむしろ嫌なことを乗り越えて頑張ったすえに成功するという道が推奨されますから。そこでエイブラハムの教えと一般的な考え方に橋をかけるのが心理学の「自己肯定感」という感覚。エイブラハムの教えを心理学で補足説明します。

感じたものが現実になるという、エイブラハムの教え。

エイブラハムとは、見えない世界の教師たちの集合体です。より高次で自由度の多い存在、宇宙の集合意識、ハイヤーセルフの集合体などとも言い換えられるでしょう。エスター・ヒックスさんという女性がエイブラハムと交信して導かれた教えがエイブラハムの教え。その基礎になるのが、自身に似た(同じ)ものを引き寄せるという宇宙の基本の法則なので、「引き寄せの法則」とも言われています。

具体的には、私たちが「貧しい」と感じていたら、貧しさを感じさせるものが引き寄せられる。「豊か」だと感じていたら、豊かさを感じさせるものが引き寄せられる。私たちが意識し、感じたもの(感情には22段階あるとされる)が現実を創るというのがエイブラハムの教えによる人生の方程式です。

参考:感情の22段階と現実の7次元について。忘却のゲームから抜けて、統合に向かうためには

出来事が感情を生むとする一般常識とのギャップ。

一方で私たちは通常、豊かな状況があるから豊かさを感じ、貧しい環境にあるから貧しさを感じると考えます。社会的なルールや集団のもとで生きるとき、切磋琢磨して頑張ること、社会の期待に応えて成功することが推奨されています。

また過去に死にもの狂いで勉強したら成績が上がったり、遊んでいたらどんどん貯金が減って困ったという経験なども重なって、やっぱり人生、苦労しないとダメだなというロジックが強固になっていきます。そこで自分が望まない状況では、頑張ることでマイナスをプラスに転じて脱出し、良い気分になろうと試みます。

つまり、私たちの世界の通念は、エイブラハムの教えとは違って、私たちはそもそも自由で喜びに満ちた価値ある存在ではなく、人に評価されることで価値が生まれたり自由になったりするという公式があります。その制約に自分を当てはめたときに、良いと認められない場合は、頑張ってそこから抜け出さなければいけないという暗黙のルールがあるのです。

そこで、頑張るとか苦労とか修行といった行動よりもむしろ、抱く気分が重要だというエイブラハムの教えは、私たちの世界のルールと大きな隔たりがあるように見えます。歯を食いしばって頑張るよりも、心穏やかにリラックスしているほうが本来の自分と同調し、成功するというわけですから。愛と調和が基本の高次の世界ではその公式が当てはまっても、制約がある物理世界で実行するには大きなずれがあって教えを適用できないように見えるのです。

それでもなお、エイブラハムはそんな疑いを払拭するように、この物理世界でも、何より大切なのは明るくていい気分という感情だと強調します。

以下は『お金と引き寄せの法則  富と健康、仕事を引き寄せ成功する究極の方法』からの抜粋です。

ほとんどの人は、嫌な気分を良い気分にするため、行動でそれを相殺しようとしている。そうすることで、自分は自由ではないし、価値がないし、それなりのものを受け取る価値があるということを、行動を通じて証明しなければならないと、多くの人が信じてきた。そうではなく、本来の波動、本来の状態である明るくていい気分であること以上に重要なことはないと力強く決めてそれを実行に移せば、物事は劇的に良くなっていく。ー『お金と引き寄せの法則  富と健康、仕事を引き寄せ成功する究極の方法』より



宇宙意識と一般的な観念のギャップを埋めるのは、自己肯定感の力。

一体どういうことでしょうか。この二つのギャップを埋めて、私たちをスムーズにエイブラハムの教えに向かわせてくれる架け橋があります。それは自己肯定感、つまり自分に価値があると思える感覚のこと。

私がここでいうのは、何かができるから自分に価値があるとか、ないときはあの人よりも劣っているという条件付きの自己肯定感ではありません。良いところも悪いところもある、ありのままの自分に価値がある。お話ししたいのは、そんな無条件の自己肯定感であり、自分の命を敬って大切にするような意識状態のことです。そんな自己肯定感のもとでは、好きなことは好き、嫌いなものは嫌い、また疲れたときは休んで、情熱にしたがって全力を尽くしたいという自分の思いを尊重し、ありのままの自分を許すことができます。

ありのままの自分を認められずもがき続けた私の話:ありのままの自分で本当に幸せになれるの? マガジンハウスからホームレス編集者へ。アメリカ先住民ナバホ族の集落で死にかけて学べた私の幸福学。

苦労や苦痛は、状況ではなく本人の捉え方で決まる。

けれどもなぜ私が無条件の自己肯定感と、エイブラハムの喜びをベースとした成功法則がリンクすると言いたいのか。それは幸福や不幸、快や不快という感覚は、出来事や状況よりも本人がそれをどう解釈するかで決まるからです。体験する物事に良さや悪さを見出すかどうか、また見出したそれを育むかどうかはその人がどう捉えるかにかかっています。

例えば幸せな人や望んだことで成功している人とはいっても、その人生が常に順風満帆というわけでもありません。バッシングされたり、日夜厳しいトレーニングを重ねていたり、大量の仕事を分刻みでこなしている方も。

しかしはたからはものすごい苦労をしているように見えても、超人的な仕事ぶりに思えても、その人にとっては苦痛ではないことが多い。例えば実業家のイーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏などは、彼らはお金がもらえなくても喜んでやるけど、それでもお金に変えられることをしているように見えます。一生豪遊しても余るぐらいの資産がありながら、新しいことに挑戦や投資し続けるのは他にも理由があるでしょうが、大前提としてそれが面白いからでしょう。

外側では頑張っているようでも、深い心の状態は緩んでいるのです。多大なストレスを抱え昼夜をしのんで激務に追われているようでも、その苦労や苦痛の有無は状況や出来事の問題ではなく、本人の捉え方で決まるのです。

情熱を持って没頭するから食事の時間を忘れていたり、お腹が減っていたことにすら気づかないほど打ち込んでいるのではと思います。自分にとって苦にならないことだからこそ高いパフォーマンスで集中し続けることができるのです。

参考:願望実現をストップさせる根深いネガティブ信念を手放し、望む現実を叶えるABC理論とは?

人生100年時代で一生働く必要があるとも言われます。そこで彼らのように夢中になってやれることを仕事にすることが課題への大きな鍵になるのではと感じています。私たちにだって必ず、楽しくて夢中になる働き方があります。心理学者のチクセント・ミハイは、この脳がとてもリラックスしている状態にも関わらず最高のパフォーマンスが発揮できる状態のことを「フロー」と呼んでいます。

そこでは、自己肯定感の高さが深く関係しています。ある時点で他の人の承認で一喜一憂することをやめて、ありのままの自分のやりたいこと・やりたくないことを認め、自分はこの生き方(サービスorやり方)で周囲に幸せを届けたいと覚悟を決めて振り切る必要があるからです。

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックもまた、著書『「やればできる!」の研究―能力を開花させるマインドセットの力で、知能などの能力が生まれつきで変えられないと考える人の多くは、他者からの評価を強く求めていると明らかにしています。つまりどこかで周囲の評価を手放さない限り、自分の可能性を信じて、思考が設定した檻を超えて踏み出せないのです。

参考:自由と多様性の風の時代を生きる、ハイヤーセルフとつながるために必要な6つのこと。

踏み出した後は、本気度を確かめるようなお試しもやってくるでしょう。

そしてそれを乗り越えた先の結果として、より自由な自分の状態になっていきます。そして、自己肯定感が上がって(今の自分の価値を信じて)、世の中に役立てるようになりさえすれば(人に価値を提供できるようになれば)、当たり前のように豊かな富が入ってくる(分かち合った結果として富が返ってくる)というのがエイブラハムの方程式なのです。

参考:寝ても覚めてもNiziU熱。スピリチュアルな経営者、J.Y.Parkさんの3つの魅力。

例えば、数学がひどく苦手で美術が得意だったら、平均点を取るために数学を勉強する時間を長くする…というのが一般的な考え方です。

しかしエイブラハムの方程式だと苦手なものを克服するよりも、その時間にどんどん心が躍る絵を描いて自分の強みを強化することに打ち込んだらいい。後に絵が売れてマーケティングや会計などの数量分析が必要になったら、苦手なそれは好きで得意な人にお願いすればいいのだからと。それで手取りが減ったとしても、苦手なことをやってエネルギーが消耗することがないので、その力を利用して新しい絵の創作に回せばいい。多様性の時代だからこそ、互いの存在を活かし合えば世界はさらに拡大・成長するのです。

そんなふうに自由や喜びへと人生のギアを振り切るには、周りの意見に囚われず、自分が良いと思うことを信じ抜く力が必要になります。そうではなく他人本位のままでは心の中は不安定なまま。自分のことを放っておいて相手の気持ちばかりに目を向けてしまいます。

心理学者アドラーは、「自分に価値があると思えるときにだけ、勇気を持てる」と言いました。アドラーが考える勇気とは、3つに集約できます。リスクを引き受けることができる能力、困難を克服する努力、協力できる能力の一部です

無条件の自己肯定感がそんな勇気を育くむことで、窮地に陥ったときには普段を遥かに超えるパワーが発揮できる。そして直面するピンチをチャンスに変えたり、ポジティブな流れを100%信じてシンクロニシティが起きる流れに身を任せられるようになったりするのです。



ほどほどに見守ってくれる誰かがいると、冒険できる。

ではどのように自己肯定感を上げれば良いのか。その答えを得るために、私たちの人生における自己肯定感が芽生える第一歩、心の発達過程について触れます。

心理学の愛着理論では、主に乳児期の子と母をはじめとした養育者との間で築かれた心理的な結びつきが自己肯定感や世界への信頼感を決めると考えます。

一歳児の行動を観察・分析した心理学者のメアリー・エインズワース。ほどほどに見守ってくれる親の子どもは、安心して何かを見つけて夢中になったり、遊びを落ち着いて楽しめることができたそうです。つまり自分には安心して帰れる場所があるのだと確信できている子どもは、勇気を持って冒険することができたのです。そういった子どもの親には、以下の特徴がありました。

  • 赤ちゃんの身になって求めていることを感じとる
  • あまり長い時間放っておかない
  • 一緒にいても何から何まで干渉したりしない

―カトリーヌ・オディベール『「ひとりではいられない」症候群 愛と孤独と依存症をめぐるエッセイより

自己肯定感を上げる方法

私たちはもう赤ん坊ではありません。物理的には、再び子ども時代に戻ることはできません。そこで成長した今の私たちが自己肯定感を上げるためにできるのは、見守って冒険させてくれる親のような目線で自分自身を取り扱うことです。つまり自分が安心して帰ることができる家をつくり、自分を育て直すということ。たとえどんなに自分がボロボロになっても温かく迎えてくれるような、自分の心の中にホームを作ることだとも言えるでしょう。

具体的には、あなたが求めていることを敏感に感じ取ってそれを満たしてあげる。寂しさ、悲しさ、ネガティブな気持ちや否定的なセルフトークが出たときには、長時間放っておかない。ジャーナリングなどで自分の心を傾聴し、きちんと受け止めてあげる。そして「こうするべき」「ああしなさい」とすべて自分の行動を思考でコントロールしようとせず、ときには心のおもむくままに休んだり冒険したりすることを許すということです。

参考:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法。

そこで必要になるのが、当たり前に思える自分の価値を自分で認めること。それを簡単に見つけるコツがあります。

あなたの周りに素敵な人はいませんか? その方の良いところをピックアップしてみてください。心理学には投影の法則(鏡の法則)というものがあります。自分の心の中にあるものが外の世界に映し出されているという考えなのですが、信じられないかもしれませんがあなたが素敵だと思う方の資質は、あなたがすでに持っている資質です。あなたの心の輝きがその人の輝きと共鳴しているということ。逆もまた然りです。目の前の現実は他人の振る舞いも含めて自分の意識が創っていると深く実感することができれば、自分の力を取り戻せます。つまり自己肯定感が上がっていきます。

参考:嫌いな自分を赦せば、愛が叶う。投影を外し、人間関係のモヤモヤを一掃する心理学。

自己肯定感が上がっていくステップ

では自己肯定感はどのようなステップを踏んで、上がっていくのでしょうか。参考になるのが心理学者カール・ロジャーズの考える、成功するカウンセリングによってクライアントが自己受容(より自分らしい、あるがままの自分を認められるようになること)できるようになるプロセスです。

以下の段階を経験するといいます。

  1. 偽りの仮面を脱いで、あるがままの自分になっていく
  2. 「こうあるべき」とか「こうするべき」といった「べき」から自由になっていく
  3. 他の人の期待を満たし続けていくことをやめる
  4. 他の人を喜ばすために、自分を型にはめるのをやめる

―諸富祥彦著『自己成長の心理学―人間性/トランスパーソナル心理学入門より

そして肯定形では、以下のように説明されます。

  1. 自分で自分の進む方向を決めるようになっていく
  2. 結果ではなく、プロセスそのものを生きるようになる
  3. 変化に伴う複雑さを生きるようになっていく
  4. 自分自身の経験に開かれ、自分が今、何を感じているかに気づくようになっていく
  5. 自分のことをもっと信頼するようになっていく
  6. 他の人をもっと受け入れるようになっていく

―諸富祥彦著『自己成長の心理学―人間性/トランスパーソナル心理学入門』より

自分の存在を正当化する必要はない。

エイブラハムは、私たちが受ける評価と私たちの価値を切り離して考える大切さを説きます。それはアドラー心理学とも共通しています。

参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法

わたしたちはよく自由と成長と喜びという完璧な三組の説明をするが、物質世界の「存在」のほとんどは価値を証明しようという間違った試みに縛られているので、すぐに「成長」という考えに関心を向ける。だが、価値があるかどうかなんてまったく問題ではない。あなたがたは誰にも何も正当化する必要はない。自分の存在を正当化する必要はない。存在している、ということが十分に正当な存在理由なのだからー『お金と引き寄せの法則  富と健康、仕事を引き寄せ成功する究極の方法』より

つまり、人生をうまくいかせようとする必要はないということ。あなたの中にある魅力や価値という輝きを認め、心の抵抗を無くしてうまくいくのを許してあげればいいのです。そしてその鍵となるのが、無条件の自己肯定感を持つということです。