過去の経験が未来を決めるわけではない。願いが叶った、なりたい自分と今つながる方法。

時間は、過去、現在、未来の順番で直線上に流れるというのが一般的な考え方です。しかしよく考えれば、実際はそうではありません。いまどう解釈するかで過去の経験は変わるし、それに伴って未来もガラッと異なります。過去、現在、未来は、異なる次元で同時に存在するという量子力学や霊的な時間の概念もあります。また、時間は未来から逆向きに流れるというアビダルマ仏教や環境学者が唱えるバックキャスティングという思考法も。どれも共通するのが、過去の経験が未来を決めるわけではないということ。そこではいまを赦すことが過去、現在、未来すべての幸せにつながるとされる理由についてお話します。

過去、現在、未来は別次元で同時に存在する。

10年間愛用していたMacが昨年ついに壊れたんです。コロナ渦で朝一番に新宿のアップルストアに向かうと、受付で90分待ち。ガーンと思いつつ、ずっと並ぶのもなぁと整理番号をもらって、ゆっくりお茶しました。その後の残り時間で近くの家電量販店をぶらぶらしていたら、買おうとしていたPCを発見。その結果、行列に並ぶこともなく、店員さんにポイントまでつけてもらって1万5000円引きで購入できました。

これを引き寄せや現実創造の法則に当てはめれば、“ホッとしてリラックスしている”今の感じが同調した現実(未来)が創造されたということになるでしょう。
参考:感情の22段階と現実の7次元について。忘却のゲームから抜けて、統合に向かうためには

参考:いい気分だといい情報にアクセスできる

現実創造における時間の概念は、過去、現在、未来と一直線上に流れているというより、別次元として同時存在すると考えるほうがしっくりきます。

そこでは量子力学の、存在するものは、すべて物質であると同時にエネルギーだという考えがベースになります。無意識というエネルギー領域にアクセスし、現実を変えるための脳トレを説くのがジョー・ディスペンザ博士。その著書あなたという習慣を断つ ― 脳科学が教える新しい自分になる方法』では、考えることと感じることというエネルギー領域が同調したとき、目に見えない電磁波場に向かって「この現実が正しい」という信号が送られると語られます。そこで人生を変えるには思考と感情という両方のエネルギーを変える必要があり、そのふたつが一致すると量子における創造の力が最大になるとか。つまり”そう思って、そう感じる”現実が創造されるというわけです。

過去は「こうだった」、そして未来は「こうだろう」と頭で考える思考のエネルギー次元のものです。それに対して現在は、「こうだ」と見たり聞いたり感じるエネルギー次元のものです。言い換えれば、過去と未来は脳の言語で表現され、感情は身体の言語で現される現実。考えと感じ方というその両方を一新して全体像としての真実を体験することで、望む現実を創造するというメソッドが「現実創造」や「引き寄せの法則」と言われるものでしょう。

だから頭でポジティブ・シンキングを貫こうと無理したり、わかったような気がするだけではダメで、それにいい気分という実感が結びついて初めて同調する次元の未来が創造されます。なぜなら私たちは霊的な存在でありながら同時に肉体を持つ物理次元の現れであり、心と体の両方を使って体験することを求めて、この物質世界に生きているからです。つまり大抵の場合において「引き寄せ」がうまくいかないのは、身体の言語である「感じ方」が置き去りにされているためです。

病気などはその一例で、思い、言葉、行動のいずれかが本当の私から反しているというサインです。私自身も重度の顔面マヒになったことで、本音を無視して”いつでも笑おう”としていた自分に体が拒否反応を示したことに気が付きました。
参考:病気が贈ってくれた、ホリスティックの真の意味とそのギフトについて



時間は未来から過去に向かう、アビダルマの概念。

考え方と感じ方という別次元にある過去と現在と未来。さらにその流れが逆であるとする捉え方もあります。

例えば「時間は未来から現在、過去へと流れている」と時の流れを逆に見る時間の捉え方。苫米地博士によると、歴史上初めてブッダの教えを体系的な思想としてまとめあげたものだとされる、アビダルマ(阿毘達磨)と最先端の分析哲学にみられます。

私のPCの例でいえば、時間は過去から未来へと流れるのではなく、“そもそも1万5000円引きで買える”という未来があって、そこに向かう過程として、“90分待ちという現在”があったという見方です。

「あれに失敗したから、未来もダメだ」「あの人に振られたから、この先幸せはない」。そんなふうに私たちは通常「現状から実現できると思われること」の積み重ねに未来があると悲観します。

そうではなく、ある未来に到達するための通過点としての“今”と捉えるこの時間の概念上では、誰かに失恋したのは、もっと良い人に出会うという未来からの筋書きかもしれません。その仕事を失ったのは、本当にあなたのことを求めている職業が待っているからかもしれません。

最高の未来を設定して“今”を見れば、どんな“今”であろうと、最高の未来につながるために必要な貴重な時間になります。どのみち最高の未来になるならと精神的な余裕が生まれ、“今”の自分はどう感じて行動したいのだろう?と選択し直すこともできます。

最高の未来から問題解決するバックキャスティング思考法。

この理想の未来の姿を起点にして現状を振り返り、今何をしたらいいのかを考える方法は、何も霊的世界に限らず、環境政策を考える上でのバックキャスティングという思考法にもみられます。バックキャスティングでは、現状のトレンド分析に基づく可能性の高い未来像ではなく、どのようにして理想の未来像を実現できるかに関心を持ちます。将来の望ましい状態を想定し、その状態に到達するためのステップを定義する方法です。

アルバート・アインシュタインも、「問題は、問題を引き起こしたレベルと同じ視点で考えていては、決して解決しない。真の答えは、その問題を起こしたもののさらに高いレベルから物事を見通すことによって解決される」と語っています アラン・コーエン著『魂の声に気づいたら、もう人生に迷わないより』

バックキャスティングは、1982年に環境学者のジョン・B・ロビンソン博士(現トロント大学教授)が、エネルギー施策に提唱したことで広く知られるようになりました(※)。長期的な視点で理想的な目標設定を行う必要があるエネルギー施策や環境政策におけるバックキャスティング思考は、なにも霊的世界に限らず、SDGsなどにも取り入れられています。
(※)John B Robinson(1982). Energy Backcasting: A Proposed Method of Policy Analysis. Energy Policy · December 1982 DOI: 10.1016/0301-4215(82)90048-9

「摩訶般若心経」が説く、まっさらな今という悟り。

過去の記憶や記録で判断され成り立つ、私たちが「こうだ」と見る現実。それをまっさらにすることで現実とはより明らかになるとは、仏教で最も有名なお経「摩訶般若心経」でも説かれます。

このお経では、抵抗しない、判断しない、執着しないというのが悟りを開いた生き方だとされます。つまり、これまでのものの見方や信念を常に一新して、日々直面する「よくわからないこと」をそのまま受け容れることで、曇りのない完全な智慧につながるとか。



現状が認められず、自分を傷つけ続けた私の経験談:ありのままの自分で本当に幸せになれるの? マガジンハウスからホームレス編集者へ。アメリカ先住民ナバホ族の集落で死にかけて学べた私の幸福学。

望む過去、現在、未来を同時に叶える鍵は、いまを赦すこと。

そこで鍵となるのが、赦しです。これは倫理や道徳的に傷つけた人を「もういいよ」と言って見逃し、我慢するという話ではありません。赦すとは見抜くことで、何かを避難の対象から解放するというより、自分を弱い犠牲者として見ることから自由にすることです。

すると、パワーが戻って達成している未来の“なりたい”次元の自分と同調し、望む現実を創造する力が最大化します。

映画『私の頭の中の消しゴム』で若年性アルツハイマーに侵され記憶を失いゆくヒロインが言う「赦しは心の部屋を一つあけること」であり、豊かさを許容するスペースが生まれるのです。

期待したものをくれなかった人を赦す。ずっと残っている問題に執着するのをやめる。失敗した、できなかった自分を許容する。なぜならそれらは“なりたい”次元の自分から見れば、幸せはその人や外のものごととは関係なく、自分で創れることに気づかせてくれるために登場した人やものごとだからです。それを知る未来の自分が描く筋書きの一部だからです。過去にもこのようにして光を送り、癒すことができます。

参考:現実創造の5ステップのカギ、豊かさを受け取るための「許容」を具体的に説明します

いまの経験は、未来の次元でもっと多くの力、知恵を得るための絶好の機会。

既にそうであるかのように振る舞う。未来のなりたい次元の自分とつながる。ぎこちない今でもいいのです。完璧な状況でなくてもいいのです。なぜなら”なりたい次元”の自分は、その過程を味わいたかったから、それはそこに向かう完璧な筋書きの一つなのです。そこに向かっていくより先に、すでにそこにある。味わいたい状況はなくても、喜びだったり安らぎだったり力強さだったりという味わいたい感覚はもう持っている。そうであることを自分に赦すだけでいいのです。

わかりやすくいえば、お金を稼いだらご馳走したいなら、今からできる範囲でその人にご馳走してみる。贈ること、他人を繁栄させることが出来る自分のパワーを信じる。すべてを持っている未来次元にある自分から見れば、ほとんど何も持っていない時でも気前よくなれるという自分の可能性や力強さを体験したかったから今のほとんど何もないという現実を体験しているのかもしれません。そこに達するために、自分の幅を広げる必要があったのかもしれません。または、本当に必要なこと、実は要らなかったことを棚卸しするプロセスを経たかったのかもしれません。

好きな人にお祝いしてもらいたいなら、最高のバースデーを自分で企画し贈ってみる。毎日を誕生日にして、自分を祝ってもいいのです。誰かに祝福されない現実は、喜びに包まれる未来次元の自分から見れば、他人や状況が自分に許可を与えてくれるのを待たず、なりたい自分になり、やりたいことをやることを自分に赦せる力を学びたかったプロセスなのかもしれません。

そんなふうに目標と同じくらい、プロセスを楽しむこと。なりたい未来の次元の自分から見れば、今のすべてが旬のストーリーです。それをゆったりと味わうことで願う未来の次元の自分とつながり、過去、現在、未来のすべてが同時に癒され、いつでも望む現実を創り出せます。



いまの自分を感じる瞑想法:動画で解説! 不安、ざわざわがリラックスする、5分間の心落ち着き瞑想。

Makiwari Radioで観ることもできます。