昨日、習慣型プラットフォーム「Nesto」の茶瞑想に参加しました。私が故ティク・ナット・ハン禅師、そして、彼から教わったマインドフルネスに出合ったきっかけも、お茶だったからです。
アンアン編集者だったときに、台湾出張でもっとも古いとされる茶芸館を取材させていただきました。そこで、お店のオーナーさんにお茶をだしていただいたんですね。
取材中はほとんど言葉を発さない、70代ぐらいの男性でした。「ただ、お茶を飲みなさい」と。
優雅で気品があって、でも威圧感はない。その人という佇まいで在る、おいしいお茶を淹れるために必要な、混じり気のない透明なお湯のような人でした。
でも具体的なお話が聞けず、記事になるかなぁと少し不安になったんです。でも、それは杞憂でした。
なぜなら、一服のお茶のおもてなしを受けることに、原稿で届けるためのすべてがあったからです。
そこで初めて、お茶は飲んだ後の器の香りも楽しむことを教わりました。忙しい出張中の数分の時間が長くゆったりとして。時間が拡張されたように感じられたのです。
忘れられない体験でした。
その後ティクナットハン禅師の以下の言葉を知ることになりました。
お茶を楽しむためには、
人は完全に、今というときに目覚めていなければならない。
今という瞬間を意識しているときにのみ、
手は茶わんの快い温かさを感じることができる。
今という瞬間のみに、香りを楽しみ、
甘さを味わい、繊細さを感じとることができる。
過去のことを思いわずらっていたり、
将来のことを心配していたりすると、
一杯のお茶を楽しむという体験を失してしまうだろう。
茶わんを見おろすと、
もうお茶はなくなっているのだ。
―ティク・ナット・ハン(一杯のお茶の楽しみ方について)
「あの茶芸館の店主が教えてくださったことだ…」。
この言葉に強くつき動かされて、
遠いフランスから彼がやってくると知り、
韓国で催された彼のマインドフルネス合宿に参加したんです。
600人の韓国人の方たちに混じって。
それが、マインドフルネスとの出合いになりました。
参考:マインドフルネスで怒りをおさめ、心と体の栄養を深く味わう生き方とは?
そんな昔のことを思い、zoomから茶瞑想がおこなわれたオンライン茶室に入室しました。
一杯のお茶は、各自心をこめて入れます。
自分をもてなすように。
18時からスタートだったので、眠れなくならないようにカフェインレスのハーブティーを選びました。参加者は、ホストを入れて8名。
もうおひとりハーブティーの方がいて、そんな偶然や出会いも楽しいものでした。
ホストの方が、オンライン茶室に集まった私たちが季節を感じるために、
二十四節気(にじゅうしせっき)、七十二候(しちじゅうにこう)という日本の古い暦から、今の季節を説明してくださいます。
日本には、春夏秋冬の四季だけではなく、二十四の気という季節、七十二もの候という季節があるのだとか。
茶瞑想が行われた日は、3月4日。この日は、
雨水 草木萌動
うすい そうもくもえうごく
という季節(新暦では3月1日から3月4日頃)だそうです。
『日本の七十二候を楽しむー旧暦のある暮らしー』によると、
しだいに寒さがやわらいで、陽光の下、草木が芽を吹き出すころ。
この季節の旬の野菜は、菜の花です。菜の花は、ビタミンCや鉄分、カリウムなどの栄養が豊富。
ほろ苦さが体の免疫力を高め、気持ちをやわらげてくれるそうです。蕗のとうもそうですね。寒さからギュッと命を現すとき、春の植物には、ちょっと苦味が必要なのかもしれません。人生のように。
話がとんでしまいました。
茶瞑想は、ホストの方が誘導してくだり、一服の時間をマイペースに楽しみます。
けれども何度も柔らかく「自分のためにお茶を淹れる」のだと、伝えてくださります。このひとときは自分に贈る、身も心も豊かにしてくれる時間なのだと忘れないように。
そして最後に、「主客一体」という言葉を贈ってくださいました。
茶道の世界で使われるおもてなしの言葉です。
おもてなしとは、ホスト(亭主)と客が一体になって、空間や時間を創り上げるということ。
そして自分へのおもてなしは、やがて他の人への優しい心にもつながっていくー。
ウクライナ情勢に心を留められている方に:AIで顔や声を合成する技術「ディープフェイク」をドキュメンタリーに。 映画『チェチェンへようこそ-ゲイの粛清-』に見る、 デジタル技術やアバター(分身)で社会を変える方法。
その心は、ティク・ナット・ハン禅師から学んだ、仏教の縁起からの造語、interbeing(相互存在)にも通じます。
私と世界はつながっている
私たちを支え、生かしている、
あなたと私のつながりが見えるだろうか
あなたがいないなら、私もいない
ーティク・ナット・ハン『味わう生き方』より
素敵な時間でした。
今日から3月9日ごろまでは、
啓蟄 蟄虫戸啓
けいちつ すごもりのむしとをひらく
です。冬ごもりしていた虫が、姿を現し出すころ。
旬の魚は、鰆(さわら)。季節の花は、すみれです。
まだ寒いけど、少しずつ春の訪れも感じられます。
どうぞ温かくして、良い1日をお過ごしください。