長生きも芸のうち。旧約聖書のご長寿たち、最先端神経科学技術からみた長生きの秘訣

川淵三郎さんの東京五輪・パラリンピック組織委員会会長就任が一転して、白紙になりましたね。ところで川淵さんは84歳で、女性蔑視発言の責任をとって辞任する森会長は、83歳。そしてアメリカのバイデン大統領は78歳で、コロナ渦の経済政策と再生エネルギー対策という難題に取り組んでいる。いろいろありますが、みなさん本当にお元気だなぁという点において感心しています。

私が尊敬する書道家で平和活動家、道元を初英訳した禅研究家でもあるKaz Tanahashiさんさんは、87歳で特大スーツケース2個をひとりで持って空港まで電車で向かうという超人です。さらには本も40冊以上書いて、作品制作もワークショップもコロナ前まで世界中で精力的に行っていらっしゃる…。

その超人ぶりを称えると、「長生きも芸のうち」と謙遜されるKazさんですが、人生100年時代って本当にリアルだなぁと思うのです。

定年が65歳なんてもう昔話で、体が動くまで現役な時代なのだなぁ。Kazさんには「あなたが本当にやりたいこと、好きなことを見つけて、それをやってください」とよく言っていただいたけど、死ぬまで働くっていうのが当たり前になるなら本当にそれって切実な話。

寿命1000年近い旧約聖書のご長寿たち。

プロテスタント系の学校に通っていたのですが、中高生時代に毎週聖書の授業がありました。そこで読んだ旧約聖書の創世記です。登場するアダムが亡くなるのが930歳でセツが912歳、旧約聖書って寿命1000年近い驚異のご長寿ぞろいなんです。だいぶリアルな年齢だなといっても、サラは90歳のときに初産でイサクを産んで、127歳で亡くなるとまだまだ超長生き。当時私は「そんなバカなー!」と一笑したけど、実際問題110歳を超える人の数が増え続けています。

現代の最高年齢は122歳。

とはいえサラほどではありません。119歳を超える人は、1997年に122歳で亡くなったフランス人のジャンヌ・カルマンさん以来今のところ登場ナシです(※)

120歳超えが難しくなった理由は、旧約聖書のノアの方舟でも語られています。ノアの方舟とはご存知、人の悪がはびこったために、洪水で方舟に乗ったノアの家族と動物たち以外を神が一掃したというストーリーです。そこで神が

「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。(創世記6・3)。

と決断したことで、人間の寿命が120歳になったとあります。

カルマンさんはそれを果敢にも破ったのです。とはいえ彼女は、ゴッホに会ったこともあるという前時代の人だから、現代人とはまったく違う生活スタイルを送った人です。だから、肥満児が多い現代人の平均寿命は下がって、最高年齢も115歳で頭打ちするだろうと予見する研究者もいます(※)

皆さんはどう思いますか? 人間の寿命の限界っていくつでしょう?

どこまでが肉体? BCIや培養臓器で寿命を伸ばす。

私はしばらく最高年齢が115歳で頭打ちになったのち、近い将来は旧約聖書状態になるのではないかなぁと思っています。そこでは肉体の定義が少し変わります。

その理由の一つは、機械と脳が直接情報のやりとりができる器具、BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェイス/Brain-Computer Interface)の存在です。

BCI技術が一般普及する社会になったら、肉体の限界が拡張されるので寿命が伸びて然りです。体に不具合があっても意識さえあればコミュニケーションが可能だし(しかも快適な状態で仮想空間で生きられるのかもしれない)、機械を使ってその能力を拡張することもできます。

さらには、ゲノム操作や培養臓器という技術革新もある

臓器ではありませんが、当初はハンバーグ1個3000万円と現実的ではない培養肉市場ですが、ビル・ゲイツなどの億万長者の民間投資が加熱しています。

3Dプリンター(※1)も駆使して、数年先はちょっと高いかなレベルの、ビーカーで育った細胞肉がスーパーに並ぶと言います。米コンサルティングファームのATカーニー社によれば、2040年には食肉市場の35%が培養肉になるのではとの予見も(※2)

参考/培養肉事情を詳しくまとめた本:クリーンミート 培養肉が世界を変える
(※1)立体印刷機。ミンチ肉の培養は進むが、ステーキ肉などの立体的な繊維感、筋肉は再現が難しい。そこで3Dバイオプリントといって、細胞を積み重ねて臓器などの立体構造を再現する技術で再現しようとする動きが盛り上がっている。ケンタッキーフライドチキン(KFC)はロシアで3Dプリントしたチキンナゲットをテスト販売した。

となれば人体に適用する技術が十分となるのは時間の問題です。使い捨てコンタクトレンズみたいに、自分の臓器を新しい肉体につけ替える、なんて時代もいずれやってくるのでしょう。空想できることは実現可能な現実だと言われるので、そう遠くない未来でしょう。



ケータイで高画質の動画を撮って編集し、世界中の友だちとオンタイムでビデオ通話するのが当たり前な現在だけど、iPhoneが初めて発売されたのは2007年のこと。これだって10年ちょっとの話だけど、以前に比べてまったく違う常識に生きています。

とはいえそんな医療治療を受けるのは、10-20年以内だとBCI研究に大量資金提供するテスラのイーロン・マスク氏やFaceBookのマーク・ザッカーバーグ氏という億万長者に限りだと思います。以降50年〜で、一般にも普及していくんじゃないかな。

今ここ、呼吸ひとつに意識を向けるという永遠。

先の20年でスタンダードが大きく変わると思います。自然と人造、人間とアンドロイド、リアルとヴァーチャル、生と死の境界がますますぼやけてくるでしょう。となると技術革新に並行して、倫理問題も協議される必要がありますね。自分にとってのしっくりくるも大切。

先の旧約聖書では、長生きしたところで心に計るのが悪ばかりだからと神が寿命を120歳にしたとありました。一見、終末論的な懲罰に見えるけど、これも愛だと思うんですね。終わりがあるのがわかっているから、大事にできるものがある。そんな私たち人間の意識状態、理解レベルに合わせた現実の枠組みを、神なるこの世界の成り立ちの源が作った。

私たちが生まれたときの赤ちゃんのままの意識状態だったら、心が悪に傾かず、終わりを意識せずとも今を大切にできる。そこでアダムの930歳のように、意識が肉体を超越できるのでしょう。それってなかなか難しいものです。

でも、深呼吸しながら息だけを感じているとその感覚に近くなります。深く開かれた意識のなかで時間が永遠みたいになって、その概念が薄れていくから。だから、呼吸ひとつに意識を向けること。自分の内側に戻ることを忘れずにいたいと思います。

よかったら呼吸瞑想やってみてね:動画で解説! 不安、ざわざわがリラックスする、5分間の心落ち着き瞑想。