あきらめないで、マイペースでいい。「できる!」感覚、自己効力感の高め方。

自己効力感とは?

「自分はできる!」と思う感覚のことを、自己効力感(self-efficacy)といいます。自己効力感について研究してきた心理学者のアルバート・バンデューラは、高い自己効力感を持つ人は、障害や失敗に直面してもあきらめず、乗り越えられると見なすと結論づけました。例えば、ビル・ゲイツを抜いて、世界2位の富豪になったイーロン・マスク。彼は宇宙開発企業スペースXの共同創業者としても知られていますが、創業初期にロシアのロケット製造業者から「あんたの言い値(2台で800万ドル)では売れない」とバカにされた後、仲間たちが「もうムリだ」と諦めるなか、小型ロケットの原価計算と性能特性表を独学ではじき出し、「自分たちでもっと安く作れる!」と前進しました。ラジウムとポロニウムという放射性元素を発見したキュリー夫人の粘り強さも特筆すべきで、研究に没頭するあまりに何度も空腹と睡眠不足で倒れたとか(1)。

(1)イーロン・マスク、キュリー夫人、エジソンなど世界を変えたイノベーターたちの行動、思考の共通点をわかりやすく分析した一冊。

世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか? [ メリッサ・A・シリング ]

自己効力感を高める3つの要因。

もうムリだと諦める人がいるいっぽうで、「できる!」と自分を信じられる人がいるのはなぜか。その違いは? 自己効力感を高める要因は大きく3つあると言われます。

1. 成功体験…自分で行動して、問題を解決したり、仕事を達成したという体験。
2. 代理体験…他の人の成功体験を見て、自分にも出来そうだと感じること。
3. 言葉による説得…周りから「できる!」と励まされること。
一番強力なのは、1の実体験に基づく成功体験です。

NiziU新曲『Step and a step』に込められた、自己効力感を上げる秘密。

現在国民的人気のガールズグループNiziUをプロデュースしたJYP社長のJ.Y.Parkさんは、自己効力感を生み出すのは、練習量と自己管理で、それ以外の方法はないといいます。魔法のようなものは起こらず、日々の練習と自己管理を十分にして自分を信頼できたときに初めて、瞳が輝いて最高のパフォーマンスができるのだとか。最高のパフォーマンスという成功体験を続けることでまた、自己効力感が強化されます。

彼が作った彼女たちの新曲『Step and a step』では、自分の歩幅で休んだりしながらマイペースに進めばいい。最後には何度も「きっとうまくいく」「きっと大丈夫」というメッセージが繰り返されています。

成功者と過ごすのも自己効力感に繋がる。

自己効力感を高める代理体験として、私個人としては、書道家で仏教研究家、平和活動家の棚橋一晃(カズ)さんと過ごした日々が挙げられます。87歳のカズさんは、今なお精力的に創作活動を続けます。そのことも感銘を受けますが、それ以上に彼の言行一致の在り方、信じること、やりたいことを貫きながら、大きな世界に対してだけでなく、自分にも家族にも私や助手のメキシコ移民のファンさんに対しても思いやりを持って存在できるという姿を見せられたことは、私の大きな代理体験となりました。「思いやりと信念を貫くことを同時に行う生き方も可能なのかもしれない…」と少し世界が信じられるようになったのです。



「長生きも芸のうちです。長く生きているうちに自然とやりたいことができるようになりました」と微笑むカズさん。彼は、『Step and a step』の楽曲にもあるように、「ブレイクスルー(困難や障害の突破口のこと)を起こすには自分の歩幅で、つまり目標を小さく区切って、それぞれに達するたびにお祝いすることも大切です」とも、おっしゃっていました。

途方もなくゴールから遠く、最初の一歩すら踏み出せていない気がするとき。「できる」なんて信じられない。やる気も出ない。しんどいときは、無理に自分を奮い立たせず、休んで時期を待つというのも一つです。進もうという気持ちが湧いてきたら、ゴールを小さく区切って、毎日できることからコツコツ実行する。そして、その小さな目標を達成できたときには、盛大にお祝いする。

信じる道を貫けば、夢のサポーターも現れる。

周りと比べず、自分のゴールに集中する。考え過ぎない。いらないプライドは捨てる。たくさん失敗して、痛い目にあっていくうちに、生まれる展開や縁がある。そんな縁は全て不思議で、本当に尊いものです。自分が望む状態を叶えている人を見て落胆したり嫉妬するのではなく、そこから良い影響を十分に受けて、「私にもできる!」と代理体験として捉える。そんなふうに黙々と目の前のことをやり続けていたら「ムリだよ」という大多数の声のなかで、「あなたにはできる」「私もその世界を見たい」と一緒にその成功を信じてくれる人(言葉による説得)がおのずと現れてきます。大丈夫!