脳卒中で倒れた脳科学者が明かす、幸せの秘密とは?

「頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい」―ジル・ボルト・テイラー(奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき より)

ひとり一人の幸せの追及は、全体の幸福でもある。

福島県沖で再び地震が起き、怪我をされたり、店舗家屋など大きな損壊被害を受けた方がたくさんいらっしゃいます。このように外側の現実として、新型コロナに東京オリンピック後任問題、地震と、望まない出来事が起こります。心理学者カール・ユングが考える集合的無意識によれば、私たちはそれぞれ違った人間で離れた場所に暮らし、個別のライフスタイルを送りながらも、深い意識はひとつにつながって、価値観や感じ方を共有しています。そこで、それぞれが心の平和を感じ幸せであることは、全体の幸福のためにも重要です。

参考:パンデミックの時代に心の種に水をやろう。幸せのための集合的無意識の活かし方。

瞑想は呼吸を感じて、思考のおしゃべりを静かにすること。

瞑想で何をやっているのかと言われてひとことで答えれば、呼吸を感じています。入っていく息、出ていく息の流れ、ふくらんだり縮んだりする胸やお腹を観察する。スーッという微かな息の音に耳を傾ける。このように感じることに100%集中しているとき、考えることを同時にできません。そのため、瞑想中に少し頭の中のおしゃべりが静かになるのです。頭の中のおしゃべりといえば大概において、自分をむち打つような厳しいささやきです。

脳卒中でワンネスという至福に至った脳科学者の話。

そんな左脳のおしゃべりから、脳卒中で完全に解放され、恍惚状態に至った脳科学者が書いたパワフルなメモワールがあります。

脳神経解剖学者ジル・ボルト・テイラーは、ハーバード医学校で脳と神経の研究に携わっていました。権威ある賞も受賞し、嘱望された彼女は、研究家たちに人間の脳について教えていました。そして37歳のときに、重い脳卒中で倒れます。幸い一命は取り止めましたが、脳の機能は著しく損傷。8年のリハビリ生活を経て復活した彼女は、実体験から得た脳の気づき、幸福感についてを一冊の本にまとめました。

左脳が壊れ、現在、過去、未来がなくなって得た解放感。

脳卒中で大量の血液が流れたのは、左脳でした。思考中枢が血だらけになったことで、彼女はものごとを順序立てて考えられなくなりました。現在、過去、未来という時系列もなくなり、それぞれ孤立して存在しています。結びつきが無いので、過去の記憶も未来の夢もありません。今この瞬間にズキズキと脈うつ脳にしか焦点が合いません。認知や概念の広がりもないので、そもそも時間の感覚すらありません。

そこでジルが体験したのは、左脳の支配から解放された右脳の静けさの、圧倒的な安らぎの世界でした。




高度な認知力と過去の人生から切り離されたことによって、意識は悟りの感覚、宇宙と融合して「ひとつになる」ワンネス状態まで高まっていきました。悟りの変容意識です。

頭の中の意地悪さえ無くせば、そもそもの恍惚状態に。

脳のおしゃべりがなければ、天才ともてはやされた自分の脳が破壊されていく様子ですら、騒がしい外界の些細な出来事に過ぎないと感じられたそうです。意識が平穏な状態に向かうにつれ、気分もふわふわと浮かぶよう。そうして破壊された脳により、奇妙なことに恍惚状態に至ったというのです()。つまり、私たちはそもそも至高状態であり、生まれたばかりの赤ちゃんのような絶対的な安らぎと幸福にあって、余計な頭の声を取り除きさえすれば、いつでもそこに至れるのです。

まったく左脳が機能しなければ、私たちは順序立てて考えたり、自分の身を守ることができません。私たちは左脳と右脳、分析すると感じるの連携プレーで生きているけれど、彼女の実体験より、不幸せな気持ちになるのは、思考の支配が強すぎるせいだともわかります。自分に厳しすぎたり、周りのことも同じパターンで決めつけたりすることで、自分を守るつもりがかえって無意味に傷つけているのです。

幸せの鍵は、呼吸に戻って感じる力を高めること。

瞬間瞬間を生まれ変わるように、心地よいを感じながら選んで、呼吸で自分の中心に戻ること。私たちの意識は、そうすることでそもそもの意識状態を思い出し、幸福感との一体感を感じられるようになっているのです。