怒りで自分をケアし、幸福度を上げるアンガーマネージメントの6ステップ

怒りは、表現してはいけない100%有害な感情だと思っていませんか?  たしかにそのまま相手にぶつけると人間関係が損なわれる危険もあります。しかし怒りを抑圧すると、健康状態の悪化やうつ病の原因になる可能性があるとか。適切にアンガーマネージメントすれば、怒りには幸福度を上げる力もあります。怒りをつかって自分をケアし、幸福度をあげるアンガーマネージメント法6ステップをお話しします。

怒りは、自分をケアするためのチャンスになる。

先日、パートナーに強がってしまい、弱いものイジメのような攻撃的な感情が芽生えてしまう。悪癖だと思うので対処法を教えてほしいというご相談を受けました。

パートナーや家族というのは自分の内面を強く投影する存在です。自分の過去の結婚生活当時を振り返って思うのは、自分への攻撃的な感情、つまり自分を思いやれない自分自身への不満や怒りを、パートナーや家族を通して映すというのはよくあることです。

参考:嫌いな自分を赦せば、愛が叶う。投影を外し、人間関係のモヤモヤを一掃する心理学。

ひとりで頑張りすぎて追い詰められていた当時のわたしにかける言葉があるとすれば、もっと手抜きしてもいい。どうしようもなくしんどいときは、働いて得たお金で一人ホテルに逃亡してもいい。それぐらいの緩さを自分に赦せられたらよかったのでしょう。そのうえで精一杯の愛情を注ぐつもりで相手に接していれば、向こうも愛を返してくれたのかもしれません。尋ねる相手がこの世界にいない今はもう、その答えを得られないのですが。



離婚後にはティク・ナット・ハン師という禅僧と出会い、彼が書いた怒り(心の炎の静め方)という世界的ベストセラー本を読みました。非常に感銘を受けて、彼のマインドフルネス合宿に参加したことで、初めてマインドフルネスについて知りました。そして後に会社をやめて心理学を学び直し、禅センターで暮らすことにもなりました。

参考:人間関係がうまくいかない4つのパターン、コントロールドラマを知って望まない関係を克服!

心は怒りや優しさの種が植えられた庭、種に水をやるのは私たち。

仏教心理学において、ティク・ナット・ハン師は、私たちの心は庭のようなものだと話します。それは、天候や風に乗って飛んできた種に影響されます。しかし手入れ次第で庭は変わり、怒りという種に水や栄養をやれば、怒りの芽が大きく育ちます。思いやりや優しさという種に水や栄養をやれば、思いやりや優しさの芽が大きく育ちます。種はいつでも心の庭にありますが、私たちがどう世話をするかによって庭の風景が左右されると言います。

瞑想やマインドフルネスなどで、怒りに対処して平静を保つことには、生理的ストレスの軽減、免疫力の向上、心臓病のリスクの低下など、明らかなメリットがあります。わたしもたくさん助けてもらっています。

参考:イライラ、不安が軽減する!呼吸3つでできるマインドフルネス

ストレスマネージメントの誤解。怒りを抑圧すると健康に悪影響。

そうではなく怒りを「無いもの」として無視した場合、心理学では、抑圧された怒りには、むしろ健康状態の悪化やうつ病の原因になる可能性があると考えられています。

怒りは心理学者が「活性化感情」と呼ぶもので、人を引きこもらせるのではなく、積極的に関与させようとする感情でもあります。

怒りに関するベストセラー本Rage Becomes Her: The Power of Women’s Angerを執筆した作家ソラヤ・チェマリー氏は、怒りは必ずしも悪いばかりではないと言います。怒りは、社会を前進させるのに必要な感情だともいうのです(※)

確かに義憤という言葉もありますが、道義に外れたことや不正に対して適切な怒りを抱くことは必要なことでもあります。



怒りは適切に扱えば、幸福度を高める助っ人にもなる。

例えば、学術誌「Emotion」に掲載された175人の被験者を対象にした研究では、対決の場面では、その場で怒りを感じることを選んだ参加者だけが、全般的に心理的な健康と幸福感が高いことがわかりました。一方で、単に怒りっぽい人は、全体的に心理的幸福度が低いことがわかりました。

この研究は、必ずしもご機嫌でいることだけが幸福度を高めるわけではないことを示唆しています。つまり他人との関係性で怒りを感じるのは適切で健康的であり、役立つこともあるのです。

しかし、怒りは受け止め方と表し方を誤ると、全体的な幸福度を低下させます。

つまり、快・不快の感情を柔軟に感じて追求することが重要なのです。具体的に言えば、状況に応じて適切な感情を抱いて、シグナルとして適切に対応することは、常にポジティブでいようとしたり、幸せだけを追求しようとしたりするよりも私たちの人生を深めるうえで良いことなのです。

怒りも適切に感じて、利用することで、自分をケアし、幸福度を高めることができるのです。

では具体的にどうイライラに対処すればいいのでしょう。

遠慮なく怒ろう、ただし相手にそのままぶつけない形で

です。そこで役立つのが以下の6つです。




怒りをつかって自分をケアするアンガーマネージメント法6ステップ

その1:怒りをボッと燃やすぐらい集中させて感じる

太陽光を虫眼鏡で集中させて紙に火をつけたことがありませんか?そのイメージでギューっと怒りや悲しみのど真ん中に入って、それをマグマのように熱して高めます。

最大級に高まり、それをボォ!っと、一気に燃やすような感じです。阿修羅のような怖い顔になっているかもしれません(笑)。

私もアンチがでたり、病気になったり、大切なひとを失ったりすると、まずその感情を感じます。嫌な気分でもギュっと集中して感じると、意外に気持ちよくなります。悪いものだと感じることを否定するから、欲求が満たされずに嫌な気分になるんです。

そこで、ここではあえて冷却させません。それは風邪で熱をだしてウィルスを殺そうとしているのに解熱剤でおさめてしまうようなものです。そうなると体内で怒りというウイルスはくすぶったままです。

感情は一人で余す所なく感じます。頭であれこれ考えるのではなく、体で怒りを感じてみます。ぐわーっと体から熱が上がってくるような感覚がするかもしれません。

ジャーナリングで書いて感じるもの手:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法

その2:少しクールダウンしたら、なるべく気分がいいことをする

感情は無視せずに、心と体をつかってしっかり感じると、クールダウンされます。その後は問題から少し離れて、なるべく気分がいいことをします。一見なんの関係もないことをします。わたしは韓国ドラマのラブコメをみたり、焼き菓子とコーヒーをいただいたり、10回深呼吸して瞑想したり、猫を撫でて和んだりしています。

参考:ドン底気分を底上げしてくれる韓流ドラマはコレ!顔面マヒ(ラムゼイハント症候群)で緊急入院する。

これが意外に良い解決法になるのです。なぜかというと、いい気分になると視野が広がるからです。幸福心理学の権威でポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則著者のバーバラ・フレドリクソン博士も、人は悪い気分になると視野が狭くなり、良い気分になると高い視点で物事を見られるようになるといっています。

参考:願う現実が引き寄せられないなら。微細な望みをキャッチし、叶える簡単なコツ

その3:怒りのエネルギーを創作活動に転じる

ネガティブな気持ちもエネルギーです。そこで強ければ強いほど、それを陽転させることもできます。心理学では昇華と言われます。文章を書いたり、絵を描いたり、楽器を弾いたりとエネルギーを陽の形で表すのも、良い発散になります。

ここでは受動的になるよりも、能動的にエネルギーを排出することがオススメです。

とくにクリエイティブなことをしなくても、散歩や運動するのもいいでしょう。

参考:創造性を開花させる! 心の暗さや魂の不健全さを自己実現に変える”昇華”とは?

その4:変えられるものと変えられないものを見極める

神よ、
変えられないものを受け入れる平穏さを与えてください。
変えられるものを変える勇気を与えてください。
そして、そのふたつを見分ける知恵を与えてください。

とは、有名なニーバーの祈りです。

アドラー心理学では、そもそも他人を変えることはできない。機嫌をとったり、屈服させようとしたりする承認欲求を持って、一喜一憂することは無意味だとします。それが苦しみの原因だと。相手がどう判断し、振る舞うかというのは、その人の課題であって、自分のテーマではないためです。

相手も自分も、その人自身が変わりたいと思わない限り、変えられない。言い換えれば、いつでも自分がどういう物の見方を選択するかは選べるということです。

さらに言えば、今この瞬間に自分がどういう物の見方や行動を選択するかで、現実は幸せにも不幸にもなるということ。

厳しくも聞こえますが、この変えられないことと変えられることをクリアにすることで、ラクになります。そしてこれは怒りを利用して幸せになるための大きな一歩になります。

参考:アドラー心理学とは? 人間関係から自由になって、今この瞬間に幸せになるポイント2つ

その5:自分のエネルギー状態がいいときに、相手の受け取りやすい形でリクエスト

相手が変わろうと思わない限り、変えられないという大前提を踏まえたうえで、どうしてもひとりで解決できないときは、相手にリクエストしてみるのもアリです。

こちらがイライラしている時は怒りや不足のエネルギーが相手にもうつるように感じます。そこでこちらがリラックスして、相手もいい気分のときに、ただ事実と結論をつたえます。

マーケティングのプロがいうように、感情論に持つれないように、事実と理論を準備します。また、「つまりどういうこと?」と思わせないように、結論、理由の順番で簡潔に話します。

「こういうことがあった」という事実を伝え「こうしたい」という結論、そして理由を話します。そこでは相手の人間性を否定する形ではなく、あくまでも自分の希望としてつたえます。

ずっと一緒にいようと思う相手なら、別にいますぐ変わってもらわなくてもいいわけです。ただし、この肉体と心を持った人生は永遠ではないというのも事実なので、ある程度は、ゆるく期限を設けておいてもいいでしょう。

参考:転職、就職、人事へのアピールに! マーケのプロが教える「好感度upの簡単なコツ」3つ

その6:相手との関係性や距離感を見直す機会に

どんなに良い状態に自分のエネルギー状態を保っても相手との不協和が生じるような場合。それはひょっとすると距離感の見直しの機会が来ているのかもしれません。

自分のことを守り、バウンダリーを設けることは悪いことではありません。

しかしバサッと縁をきるのではなく、心理的に薄いベールをまとってみたり、共有する時間を少し減らしてみることから始めましょう。

そこで並行しておこなうのは、ホッとしたり、心地よかったりするものを選び続けるということ。怒りや悲しみにトラップされず、視野を広げるためです。感情は私たちの魂ナビですが、そこにトラップされてしまうと本来のゴール(お互いの幸せ)が見えなくなってしまいます。

まとめ

今回は、怒りを抑える代わりに、自分の内なる怒りを利用して自分自身をケアするアンガーマネージメント方法についてお話ししました。そこで大切なのは自分に思いやりを持つことです。怒っている自分を恥ずかしく思ったり、罰したりする必要はありません。怒りも適切な形で利用すれば、あなたとあなたの大切な人の関係性を深める助っ人になるのです。