元anan編集者。そして家を引き払って、ホームレスになる #15

アメリカに行ってから、つねに悩まされたのがおうち問題です。

いまだに部屋探しをしている夢をたびたび見るし、目が覚めてから天井を見つめて「あぁ、いま私は東京なんだな…」と実感するまでしばらく時間がかかります。

 

アメリカの5年弱は、マズローの欲求5段階説でいうところの自己実現どころか、生理欲求とか安全欲求とか、低次の欲求を満たそうとして満たされずにアップアップ。勉強に追い込まれているときは、その恐怖で家の不安が薄れたけど、自分の社会的立場を理解して、いつでも「出て行け」と言われる覚悟はしていました。身についたスキル、素早い荷造り。寝ぼけまなこのアイキャッチ写真、寝癖が酷すぎて雑な画像処理(許してください)。

 

というのも渡米2か月で、サンフランシスコの語学学校で紹介されたホームステイでは、躁鬱気味のホストマザーに追い出され危うくホームレスに。Craiglistでレアコンサートチケットを争奪するみたいにメールを送り続けて、ようやく決まったシェアハウスではハウスメイトにお金を貸すと返ってこない。挙げ句の果てには、強盗に携帯電話と財布を白昼堂々盗られるという有り様です。

 

一時帰国でマンスリーマンションを借りたときも、いままでとはまったく身分が違うんだなぁーと痛感しました。どこかの会社に所属していない「どこの馬の骨やねん」な私は、クレジットカード先払いでも、親に保証人の欄にサインしてもらわないといけません。

 

「絶対迷惑かけません!」と会社を辞めて渡米した手前、これはホント、自分が情けなかったですね。でも、それを選んだのはほかでもない自分自身なわけだから仕方がない。ズッコケながら、「私、こういう感じなんだな」と己の社会価値を受け止めていました。

 

そしてようやく「安心して住める家があるって、すごいことなんだなぁ。大事なことなんだなぁ」と、思い知ったわけです。世間知らず!

 

そんなわけだったのに、「ようやく決めた部屋を引き払って、旅に出なさい」だなんて。

 

そんな心の声が聞こえたのは、ペルーのクアンデロ(ラテンアメリカ土着の男性精神治療医、祈祷師)のエミリオの2度目のエネルギーヒーリングを受けた4日後のことでした。

 

エミリオはもともと土着的な霊力があるヒーラーですが、レイキ、エンジェルヒーリング、ビオマグネティスム、フラワーエッセンスなど外来のエネルギー手法も用います。彼のセッションでは、感情のブロックがハートあたりで石のように感じられること、エネルギーの流れは体感できること、意識だけの状態など、不思議体験もしました。

 

そんな体験をしたからどうってことはないんだろうけど、当時のわたしにとっては、もう一度エネルギーやヒーリングの世界に心を開くために必要なことだったと思います。

 

というのも、私はもともと目に見えない世界のことを信じていたけど、メジャー誌の編集者経験で、心理学などの有識者や有名人の声を借りないとそれがうまく伝わらないことをひしひしと学んできたから。

 

だから渡米してからは特に論文を読んだり、バークレー大の研究室で学んだりして、スピリチュアル世界と関わることを封印していました。そっち方面に行ったら、眉唾のオカルト扱いにハマるぞと。

 

でも妙な因果でヴィパッサナー瞑想合宿で奉仕したあとに(なんと女性サーバーひとりだったんですヨォおお。死ぬかと思いました)エミリオと出会い、彼にエネルギーヒーリングを贈り続けられることになります。

 

さて「旅に出なさい」というのは聞こえたというか、正確に言うと音として耳で聞いたと言うより、ダイレクトに「そうなんだ」と伝わってくる感じでした。

 

まず、当然「なんで?」と思いました。

そのあとで、「いやいや、そんなことは大変そうだし、ムリ」と。

 

頭はそうわかるんだけど、なぜか「まぁ、そうですよね」と肚がすわるような感覚もするんです。

こういう感じは、誰にでも起こりうること。

理由はわからないけど妙な自信があって、身を守りたいという防衛本能とは相反する決断をしたという経験ってありませんか?

 

おそらく瞑想したり、ヒーリングを受けると、思考が下す善悪の判断が緩むので、「理由はよくわからないけど、そんな気がする」メッセージとつながりやすい状態になるのでしょう。

 

今までも、恵まれた環境にいたのに会社を辞めたり、「ムリムリ」と語学学校の先生とクラスメイトに笑われながら、もっていた勇気をすべて奮い起こしてバークレー大に飛び込んだりして。その結果、ビリケツをかっこ悪く全速力で走り続けることになるのですが、当の本人はなんかやれてしまう(というか、やらざるを得ない)。

 

「また、これが来たか…」と、正直思いました。

 

理由が知りたいですが、人生には大きな地図があって、それはきっと論理的な理解を超えているので、頭でわかろうとしても無理なのです。

 

そこで、声を受け取ったその日のうちにバークレーで8人暮らしをしていたシェアハウスのマネージャーに退去の意向を伝えました。

 

その後は次に住む人を決めて出ていこうと、すぐにバークレー大の学生が利用するFacebookグループで募集しました。40通ほどメッセージをやり取りした後にオープンルームを行なって、ハウスマネージャーと一緒に15名のバークレー大生の面談。売った家具代は、ちょうど料理家で社会活動家のアリス・ウォーターズさんの記事を一時帰国中にgreenzで書くことになっていたので、記事の撮影がてら初シェ・パニーズでパーっと豪快に使い切りました!

そこで書いたgreenzの記事

 

研究アシスタントを退いてからは特にやることなく、本を読んだり、友だちにヨガを教えたり、エネルギーヒーリングのワークショップに顔を出してみたり。切れたパンツのゴムみたいな自分に焦りつつも、久しぶりの穏やかで眠たい日々を過ごしていました。

でも、バークレー最後の1か月間は入居者探しで飛ぶように過ぎ去りました。

 

ここまでして退去する人は今まで居なかったらしく、最後は「ものすごく助かったよ!!」と、アメリカ人版カオナシ(千と千尋のね)みたいなハウスマネージャーDに満面の笑みで握手されたのは、嬉しかったな。

 

さて入居者が決まり、出ていく準備は万端。

とはいえ行き先もやることも決まっていないのです。

 

エサレン研究所の住み込み学生プログラムを申し込んでいるけど、音沙汰なし。我ながら、正気の沙汰じゃない。

 

ここで不安ベースの私が登場します。

 

決めたはいいけど、先がわからないのって、ついに私バカを超えて狂ったか…。

ヒーリングで勢いづいちゃって、なにやっているんだろう…。

 

そんなふうに恐怖に飲まれてノイローゼになりそうなときは、瞑想やジャーナリングして、

「あと命が一年だったら、どう生きたい? なにをしたい?」と質問してリセット。

 

確かに直観医療の第一人者で神学博士のキャロライン・メイスが言うように、5大欲求とは別の次元で、私たちの心の奥底にある欲求というのは、「自分の狂気や不安の支配的な影響から自由になること」だと思います。

 

それは、「好きに生きちゃダメ」「お前はダメだ」という自分の悪魔のささやきや不安から解放されること。

当然いろいろやらかした後の今もまだ、そういういじわるな自分の声がたっぷりあります。とくに最近は、挑戦するのがちょっと怖くなっている感じがする。「勢いばかりじゃなくて、もっと準備しないと」となっているんです。「踏み出せなくて嫌だな」と思っていたけど、「そういう動けない一面もあるんだな」と受け容れられるようになってきました。

 

また、断られたり、新しいことをして失敗するのを怖がっている一面に気づけるようになったぶん、「なにを失うのが怖いって思っているんだろう?」と自問して情報を得たりと、狂気や不安への付き合いかたが変わったかな。

 

そうやって客観視すると、私が怖がっているのは、失敗したり、お前はダメだって言われること。

そのもっと奥にあるのは、何かの役に立ってなければ、社会的に認められなければ、自分は存在しちゃダメという思い込み。でも、暗い場所にのまれてしまいさえしなければ、恐怖や不安は心の奥にある欲求を知るための大切な手がかりになります。

 

バークレーでは不安になったら、エミリオがヒーリングを贈ってくれました。自分の精神力だけでは乗り切れなかったと思うし、本当に助けられました。ある日、お金がないわたしはそのお返しをしたいと、セッションルームの掃除をさせてもらいました。すると、エサレンからメッセージを着信。

こういうときはいつも、贈ったり贈られるというエネルギーは循環のなかにあるんだというニップンさんやツリーさんの言葉を実感します。

お会計ゼロ円レストランオーナー、ニップンさんのギフトな生き方#11

50年以上サンフランシスコのど真ん中で食べ物を贈り続けるツリーさん#10

 

よし! 7月の行き先が決まった。

 

5月は、わたしが渡米したきっかけである映画「happy」にも登場する、ダライ・ラマ14世と瞑想の効果を研究した脳科学者リチャード・ディビッドソン博士が登壇するとあり、ニューメキシコ州にあるウパヤ禅センターのシンポジウムに参加することに決めました。

テーマは、「境界や違いを超える」。

「ウパヤの後、エサレンまでの行き先はどうしよう?」 と思っていたら、カリフォルニアでマクロビオティックを広めたカズコさんからオーガニックの梅林を引き継いだキヨちゃんから連絡がきます。

 

「ホームレスになって、旅に出るんだ」といったら、宇宙のリズムに合わせて生きているキヨちゃんだから、驚きません。

[50]えたいがしれない

 

「いいねぇ!アリゾナとニューメキシコは隣だから、足を伸ばせるならナバホ族のおじさんをご紹介するよ」とキヨちゃん。

 

そんな流れで、少しずつ、行き先ややることが決まっていきました。

 

さぁ、これからは全所持物はスーツケース1つ。ホームフリーの旅が始まります。