その不幸は、体に積もった心の痛みのせい? 感情のキズを感じて「ペインボディ」を治す方法。

生活するなかで、私たちが経験する悲しみや怒り。イライラや不安はもちろん、「すっかり忘れた」「もう立ち直った」と思っている体験でも、それはネガティブなエネルギーという形で体に記憶されます。世界的なスピリチュアル指導者エックハルト・トールは、それを「ペインボディ」と呼びました。体に記憶される感情の痛みとはいったい何なのか、どうすればそれを癒すことができるのかについて解説していきます。

 

ペインボディってなに?

ペインボディは、「Pain(痛み)」と「Body(体)」からなる合成語です。それは、見捨てられたり、失ったり、心や体が傷つくといった、全身に記憶された私たちが経験した過去の悲しみ、恐れ、感情の痛みのこと。そのような感覚的なネガティブなエネルギーは、目に見えないけれど、確かに私たちの心と体にくっついているのです。

 

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私がカリフォルニア州にあるエサレン研究所という場所で、『フルボディ・プレゼンス(完全な身体として存在する)』という自己ヒーリング法を学んだときも、頭が知らないところで、体はいろんなニュアンスを感じて状況判断していること。そんな自分のなかに確かに存在して、未開発な体の智慧とつながることで、私たちはもっと多くの情報を得て、自分にとってより望ましい人生を選択できると何度も強調されました。

私自身、頭の声のボリュームを小さくしながら体の声を聞いて、自由に体を動かして行う瞑想を行ったときに、涙が止まらなくなってびっくりしたことがあります。そこで浮き上がってきた、もう完全に忘れていた記憶のキズは驚くようなものでした。これは意識レベルでは感知できなかった「ペインボディ」に触れたせいでしょう。

心理学の世界では、このように言語化できない体の声、自分の内側の漠然とした感じに意識を向けてホンネに気づいていく「フォーカシング」と呼ばれる心理療法もあります。

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日本におけるフォーカシング の第一人者 池見陽先生の本。先生は、フォーカシング の生みの父、ユージン・ジェンドリン博士に直接学ばれた。

ペインボディが不幸を呼ぶ理由。

私たちが見ている世界は、自分が重要だと思っているものだけが見えている世界です。クリストファー・チャブリスとダニエル・サイモンズというハーバード大学の心理学者が行った実験でも、明らかに目の前にあるものでも、別のものに気を取られていると認識の枠から外れてしまうことがわかっています。

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さらには暴力的なゲームをプレーする子どもたちがいじめの現場を見てもあまり気にしないというように(1)、ペインボディごしの世界が当たり前になってしまうと、感情の痛みを伴う現実に懸念を示さなくなる恐れもあります。

 

このようにペインボディの色眼鏡越しでは、自分、周りの人たち、世界とのあいだに隔たりができ、無意識のうちに、目の前の「幸せのキー」を見失ってしまう可能性が。それが不幸を誘う原因です。

 

体に積もった心の痛みを治す5つのステップ。

エックハルト・トールは、このように幸せを阻んでしまうペインボディを治すためには、「いまここ」に意識を向かわせること。過去の記憶や未来の不安や期待に心を囚われず、“いまの力(the power of NOW)”、“自分の意識という存在の力(the power of your own conscious presence)”と繋がることだと言います。それは5つのステップです。

 

  1. ペインボディを自覚する。
  2. ペインボディがあることを受け容れる。
  3. その感じ、感覚を考えに変換させようとしない。ペインボディを良い悪いとジャッジしたり、分析しない)。
  4. ペインボディを自分のアイデンティとしない。(ペインボディは確かに自分の中にあるものだけど、ペインボディ=自分、としない)。
  5. いまここにとどまって、自分の内側でなにが起こっているのか。観察者であり続ける(痛み、不安を自己同一化せず、ありのまま観察するという目撃者の立場をとる)。

 

雲ではなく、空であることを思い出す。

「イヤ」な匂いの尿や便をクンクンと嗅いで、距離や方角を知るための情報として知る動物たち。「いまここ」にとどまって、彼らのように喜怒哀楽という感情も選り好みせず、観察しながら軽やかに生きる材料にしてしまう冷静さ。それは、思考のネジを緩めて”ちょっとバカになる”逆説的な”賢さ”とも言えます。イヤな感情や考えは、空に浮かぶ雲のようなもの。私たちは、雲ではなく、それを観察する空であることを思い出します。

 

GSIパートナーズ代表のスティーヴン・ウォルフは、そんな生きる知恵を「マインドフル・プレゼンス」と呼んでいます。それは現状を認識して、掘り下げてみようとする意識。

 

「たしかに楽しいものではなりませんが、否定的な感情は、ちゃんと向き合えば、最後に成果をもたらしてくれます」(1)。

 

その気持ちがわからなくても、言葉にならないものでも、「これは何だ?」と体の実感とともに立ち止まり、観察しながらその背後にある問題と向き合ってみる。そうすることで私たちはペインボディを超えた、“いまの力”と繋がった存在(ハイヤーセルフ)へと目覚めていきます。

[37] 考えるように感じ、感じるように考える

 

参考

Eckhart Tolle『The Power of Now』(Hodder & Stoughton, 1999)

1.ダニエル・ゴールマン著、土屋京子訳『フォーカス』(日本経済新聞出版社、2015年)