好きを仕事にできる人の人生を動かす”祈りの力”。 ビザもお金もなく渡米した薄衣希代子さんを マクロビオティックゆかりの梅農園主に導いた物語。

私は「祈りの力」は絶対あると思っています。それは見えない深い心で、お金や人という目に見える物体を動かす「祈り経済」とも言えます。私の友だちでそれを体現するのが、キヨちゃん(薄衣さん)です。私がキヨちゃんと出会ったのは、苦学生していたカリフォルニア。彼女にはずいぶん色々と助けてもらったのですが、人の心を動かしてさりげなくサポートできる不言実行の人なんですね。キヨちゃんは誰かの誕生日会を企画してバンドを呼び、流しそうめんセットをどこからか借りて、でも司会などの目立つことは人に任せて、最後までお皿を洗うような人です。キヨちゃんは震災後、滞在ビザもなく所持金もなく、英語もほとんどわからずアメリカにやってきました。そして35歳のある日、マクロビオティックに深いゆかりがあるオーガニックの梅農園を突然買い取ってオーナーになったんです。みんなビックリ! 一見ムリそうに見えるけど必要なお金や人の縁を動かすために彼女が用いてきたのは「祈りの力」でした。彼女がカリフォルニアの農園主に至った冒険物語についてgreenzさんで執筆させていただきました。

祈りの力で、お金や人の心を動かす「祈り経済」。

私は、祈りの力は絶対にあると思っています。

何も、アメリカの禅センターやエサレン研究所のようなスピリチュアルな環境で暮らしていたから言うのではありません。そういう閉じられた世界の話ではなく、実社会で自分の好きなことを仕事にしている人たち(※)にお話を伺うと、毎回のように感じるのが、この「祈りの力」なんです。それは目に見えない強い思いで、お金や人という物体を動かす、祈り経済とも言えるでしょう。

(※)脚本を書いたこともアニメ映画を作ったことも資金集めの経験もなく、世界で話題の映画を作り上げた方エリート教育を受けて保障された会社員生活を辞して、魂の自分とつながって好きなお菓子作りをなりわいとする循環型の暮らしを家族と歩まれる方など

彼らの物語には共通点があります。それは「やりたいことをやる」と腹をくくると、それが実現される前に必ず、祈りのような奥深い力が働くことです。



彼らは願いを実現させるのに、資格や経験、学歴、たくさんのお金や人脈などの外側の条件は、必ずしもいらないと口を揃えます。非凡な天才やヒーローである必要もなく、ただ「できない」という外側の現実より、「やりたい」という自分の内側に意識を向けてひたむきに実行することだと言うのです。そして、未来に希望を抱いて一心に励み続けると、あるとき沸点を迎えて、神が手を差し伸べるかのような奇跡的な出来事が起こります。

祈りとは、このような頭の理解を超えた聖なるものに深く意識を向けることです。そしてじつは、そんな深い心によって願望が実現されるというのは、脳の仕組みを踏まえても理に叶っています。

脳は毎秒4億ビットもの情報を処理していますが、そのうち意識にのぼるのはわずか2000ビットに限られています。つまり、私たちが見たり触れたりしてリアリティだと信じるものは、現実世界の0.00005%というごく一部の情報に過ぎません(アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ著、市中芳江訳『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』より)。

夢を実現するときの障害になるのは、「こうじゃないとダメ」と、0.00005%の現実にフォーカスする思い込み。そこから自由になり、思考 を超えた私たちの命の根源と意識をつなぐことで、体験出来る現実が変わるのだと思います。

当然、祈りの力だけで夢が叶うわけがないと疑う人もたくさんいるでしょう。しかし、自分を超えるものを受け入れ、人との関わりや宇宙の計らいとつながる祈りの力に素直に乗ったことで、意のままに人生を動かした人は大勢いるのです。

マクロビオティックと深いつながりがある有機梅農園主の薄衣さん。

そのひとりが、今回ご紹介する薄衣(うすぎ)希代子さんです。薄衣さんは現在、カリフォルニア州チコ市で、「Mume Farm」という自然農法の梅農園を営んでいます。

彼女は、外側のハンデをものともせず、周りの人たちを輝かせながら、目の前のベストを選んで実行してきた人です。そして経営者である彼女が、試練のときほど大切にしてきたのが「祈り」でした。

強風で梅が一気に落ちるなど、自然相手の仕事には厳しい一面も。

先代農園主の八木数子さんと薄衣さんの夫のロンさん。数子さんからは「大変なこともあるけど、誰もやったことがないことをやるって楽しいじゃない」と鼓舞されてきた。

左から梅酢($13)、梅シロップ($13)、2017年漬けの梅干し($26)、梅干しを漬けた際のシソの葉($12)。※すべて税込み価格

困難や試練もすべて、人生への信頼を深めるための出来事。

彼女は、人生に価値のない時間はひとつもない、困難に見える出来事もすべて人生への信頼を深めるために必要なことだと言い切ります。そして望むことにフォーカスし、望まないことには意識を向けません。なぜなら、目に見えない祈りの力が人生を動かすと知っているからです。

これは、そんなひとりの日本人女性がどんなふうに祈りの力を行動に変え、アメリカの農園経営に至ったのかという物語です。あなたが大好きなことに向かうための後押しになればと願います。

岩手県の小道で、流木アートや絵を売っていた

 岩手県盛岡市出身の薄衣さんは、どこから流れ着いたのか、人知れぬ物語に磨かれた流木に魅せられた少女でした。

高校生の頃から、流木でフォトフレームをつくったり、絵を描いたりして路上販売していた薄衣さん。卒業後は進学せず、道で作品を販売し、その中で知り合ったカフェ店主の店で働きました。20代前半はインドを中心にバックパッカー旅行に明け暮れました。

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