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[3] 人生相談

今朝はメジロを3羽見ました。お抹茶みたいな深い緑色に目の周りだけぐるっと小さく白いアクセント。本当にセンスがいい。あんな色の組み合わせで洋服をコーディネートしたこと、私は今まで無いです。今度抹茶色のセーターに鮮やかなオレンジのリップをさしてみようかななんて、ヨーコちゃんの家はインスピレーションの宝庫です。

仏壇のろうそくで夜を過ごす。

それでも唯一「ひやぁ!」ということがあるとすれば、お風呂に入ったあとにドライヤーをかけると電気のブレーカーが飛んでしまうことです。突然家じゅうが、ばちんっと真っ暗になるんです。初日はブレーカーの場所がわからなくて、ヨーコちゃんのご先祖さまのお仏壇にろうそくを借りて夜を過ごしたっけ。でもその夜はちょっとキャンプみたいで面白かったです。そういえば、いつもより睡眠が深かったようにも感じます。

でもこの突然の「ばちんっ」はちょっと恐怖なので、びくびくしながらドライヤーをかけていました。そこで興味を持ったのは「いったいこれをどうやって解決したら楽しめるかな?」ということ。

電気を消して、世界と自分の境を確かめる。

そんなときにふと、神道の研究をされていて緑色の服しか着ないというカマタ先生のことを思い出しました。「お風呂に入るときは電気を全部消して真っ暗にして”自分”と”自分以外”の境目を確認する」とお話されていたんです。

目が見えると皮膚を境にしてその内側が自分で、外側が自分以外と視覚だけで決めつけてしまう。そしてほかの嗅覚や触覚や聴覚なんかの「ここまでだよ!」という意見はないがしろにされてしまうんだそうです。そこで先生は1日のうちにそうやって感覚のトレーニングをするのだとか。そんな話を思い出して、わたしも真っ暗にしてドライヤーをかけてみることにしました。ブレーカー問題も解決されるし、一石二鳥でしょう。

電気を消してみると最初はちょっと怖いなぁという気持ちになります。というのもここはお風呂場にステンドグラスがあるような趣のある古い家だから、暗くなるとまた凄みが増すのです。そこにただひとりで、ブーンっというドライヤーの音だけが響きます。真っ暗になるとドライヤーからの熱や風も薄膜のフィルターが一枚外されたようで、ドライヤーの音は思っていたより大きいんだなぁと感じます。江戸時代なんかは当然ドライヤーなんて無かっただろうけど、こんなふうに夜の闇は深くて、感覚のトレーニングが自然に出来ていたり、目に見えない存在を感じたりもしていたんだろうな。

アメリカの新聞の人生相談が好き。

ところでお悩み解決といえば、わたしはアメリカの新聞の人生相談を読むのが好き。相談者の悩みもユニークだし、回答者の切り返しも機知に溢れているからです。私にとっては日本の新聞よりも回答者のユーモアが感じられます。とくにウォールストリート・ジャーナルという新聞で連載していた行動経済学者のダン・アリエリー先生の答えにはいつも感心して笑ってしまいました。『アリエリー教授の人生相談室』という日本語の本もありますよ。

回答者アリエリー先生の人生は、壮絶です。先生は18歳のときに事故で体の70%を大やけどしました。18歳から21歳という青春期に、壮絶な痛みを抱えながらの3年間の入院生活。なかでも包帯を替えるときが、地獄の苦しみだったといいます。

そこで包帯をピリッと短時間で剥がす(苦しみの時間は短いけど痛みの強さは大きい)か、じわじわとゆっくり丁寧に剥がす(苦しみの時間は長いけど痛みの強さは小さい)か患者目線でどちらのほうが治療としていいんだろう?と興味を持ったことがアリエリー先生の研究生活の発端です。悲劇的な人生の出来事にのまれず、ちょっとひいて観察できるその目線がすごいなぁと憧れます。まるで般若心経の世界みたい。

相談者のお悩みはこんな感じです。例えば義理のお父さんに誕生日プレゼントを贈っても毎年使われないまま放置されてしまうと悩むベロニカさん。それに対してアリエリー先生は、「ウィスキーやワインなど時間の経過でどんどん価値があがっていくものを選んだら、使ってもらえなくても気にならなくなるんじゃない?」と回答します。クスッ。

毎日ニンニクを食べたら元気もりもりでストレスが減ったような気分がするけど、これはプラセボ効果?というヨラムさんに対しては、「そんなに気分がいいのは、周りの人が寄ってこないせいだと考えたことはあるかな?」と返答。ぷぷぷっ。

アリエリー先生だったら、一体私のブレーカー問題をどんなふうに合理的に解釈するのかしら。残念ながら直接メールが出来る仲じゃないので、勝手に想像してみました。

突然の暗闇に陥ったときは、光を生む電気、その技術の驚異に思いを馳せてみたらどうだろう。社会科学者の立場でいうと不可思議なものに恐怖を感じるのは、基本的で一般的な人間の本質。人類共通の性質を身をもって体験することで、「私もあなたも同じ」と世界平和の実現に少しは近づくことができるんじゃないかな。少なくとも私はそう自分に言い聞かせているし、それで気分が落ち着くこともあるよ。君が強情でそんなことでは気が済まないというなら、電池式のライトを手に入れてみたらどうだろう。