home 東京薪割り生活 [40]不機嫌なウサギ

[40]不機嫌なウサギ

小さい頃、4つほど通りの向こうにあったコムラ先生の絵画教室に通っていました。

 

コムラ先生は、シュタイナー教育思想などを取り入れて、子どもたちひとりひとりの個性を大切にしました。先生自身も見た目からして独創的で、紫色やカラス色の長めのニットにみぞおちにかかる大きなペンダント、ツヤツヤしたその漆黒の髪はグルングルンとしっかりパーマがかかり、大きな唇には真っ赤なルージュ。眠たいぐらいおっとりした住宅街で、コムラ先生は独自の風を吹かせていました。

 

母とコムラ先生は全然タイプが違ったので、母があの絵画教室に私を通わせてくれたのは面白いご縁だったなぁと思います。(絵画教室を卒業した後は、町内会のおじいさんおばあさんに習う陶芸教室でした。いま思えば、母の習い事チョイスは斬新だったと思います)。

 

週に一度通う教室は、先生の家の庭の離れの、絵本に出てくるような木こり小屋でした。子どもたちはそこでいろんな色の絵の具やパステル、クレヨンを自由に使って絵を描いたり、粘土細工をします。

 

1日の終わりには、いろんな色の小さな正方形の色紙から好きなものを9枚選んで、9つのマスが印刷された紙の好きなマスに貼り合せて先生に提出します。

 

するとコムラ先生は「なるほど。アヤちゃんは今、そうなのね」と言います。

なんだか魔法みたいで不思議なので「何がわかるの?」と聞いたら、

「アヤちゃんがこの教室を卒業するときに教えてあげるわね」と先生は言ったけど、未だに謎です。企業秘密らしい。

 

庭には小さな小屋があって、ウサギが二匹飼われていました。黒いほうは愛嬌が良くてみんなの人気者。うっとりするほど真っ白なもう一匹はいつも不機嫌そうで、赤い目も怖いと敬遠されていました。

 

でも私はそのウサギがお気に入りでした。外の小屋にいるのに、いつでも真っ白なところと、餌をやったところで、タイミングが悪いと時々噛んでくるところも、なんかいいなぁと思ったのです。このウサギらしく生きているなぁ、嘘がないなぁ、すごいなぁと。

 

お誕生日プレゼントや年賀状の数を気にして、あっちのお友達、こっちのお友達に好かれようと愛想を振りまいていた自分とは違うウサギの毅然とした在り方を、子どもながらにリスペクトしたのかもしれません。

 

みんなが白いウサギのことを嫌がって近寄らなくなればなるほど私は教室を抜け出してエサをやったり、ウサギのことを心の中で大事に思いました。ウサギばっかり夢中だったので、あまり良い生徒ではなかったと思います。

 

もしもちょっと疲れていたら、お休みをとることを考えてみませんか。

会社が休ませてくれない。勤務状況的に難しい。お金がないからそれは無理。

どうせコロナで気分転換するにもどこも行けない。

 

そういう休日のことじゃないです。

黒いウサギになろうとすることを、ときには休んで欲しいのです。

毎日ニコニコ、限りなく周りに気をつかうのは、やっぱり疲れますから。

 

小さい私が「いいなぁ!」となったように、白いウサギのあなたにも誰かを惹きつける磁力があります。そのファンは私のような変わり者一人かもしれませんが、そのぶん一人当たりの好き度合いは濃いです。

 

私は英語のIntegrity(インテグリティ)という言葉が好きなのですが、この言葉には、全体、完全な状態、健全などに加えて、正直、誠実さという意味があります。

 

怒るし、笑うし、泣くし、喜ぶこともある。気配り上手なところもあるし、ブスッと不機嫌なときもある。

 

陰と陽が一致したありのままのあなたは、自然で完全です。そして必ず嘘偽りの無い人間関係に恵まれます。