home 東京薪割り生活 [47]やましい楽しみ

[47]やましい楽しみ

オールドファッションのチョコがけとかチョコレートビスケットだとか。チョコレートと小麦粉の掛け合わせに目がないものだから、ゾンビみたいな気分になってもそれらが体内に吸収されたとたんに黄泉の国からよみがえることができます。

 

パリッとしたチョコと、サクッとかカリっという焼き菓子の食感が好きなので、チョコレートビスケットは買ってすぐにはいただかず、スーパーから持ち帰って出番が来るまで冷凍庫のなかに潜めておきます。

 

そして近所の小学校から18時を知らせる放送音楽が流れて、その後しばらくして隣家から焼き魚だったり、シチューだったりという、まっとうな家庭の夕食の香りがしたら…、そっと冷凍庫の扉を開くのです。

 

あるときはベジまんを皮から作ってみたり、あるときはお菓子でご飯を済ませてみたり。ひとり暮らしにありがちな、気まぐれな食生活です。

 

とはいえ、どんなに無茶をやっても健康を謳歌できるという、人生において、輝かしく、奇跡のように恵まれた時期は過ぎ、砂糖を取りすぎると頭痛がしたり、グルテン過多でじんましんがでたりする今日この頃。

 

それでもわたしの中毒的な焼き菓子愛はとどまることを知りません。今朝は図書館の帰りのスーパーでついに「サーターアンダギー・ミックス」と出合ってしまいました。

 

あれを開封したら、狂ったようにドーナツを揚げ続けるんだろうなぁ。それできっと上手に黄金色にカリッとするのは3個目ぐらいからで、それまでの失敗作を味見し続けた結果、胸焼けして炭酸水を飲むんだと思う。

 

このように良くないとわかっているけどやめられない楽しみのことを英語で、Guilty Pleasure(ギルティ・プレジャー)と言います。

 

アメリカで暮らしていた頃は、いろんなことに遭遇したものだから、最初のほうだけですが、とにかく英語ができないと死活問題だとなるべく日本語を禁じていました。

 

でもストイックをひたすら貫こうとすると、特にバークレーに通いだして英語の「わからん」洪水を浴び続けたことで精神がぐらつき、闇に引き込まれそうになりました。

 

そんな当時のギルティ・プレジャーはYouTubeで観る日本のエンタメでした。学校の図書館のwifiで、ロバート秋山さんの「クリエイターズ・ファイル」と、綾瀬はるかさんの「きょうは会社休みます」の再放送を倍速にしてみて、思わず爆笑しそうになるのを堪えたり(図書館だから)、妄想恋愛の世界で癒されたっけ。

 

「あぁ、勉強しなあかんけど。30分だけ…」と後ろめたく思いつつも、ものすごい心を緩ませてもらったなぁ。

 

体験して思うのは追い詰められたときこそ、息抜きできる場所をもっておくって本当に大切。帰国したいまもなお、わたし主演の崖っぷちドラマに酔ってきているなぁと気づいたら、チョコがけオールドファッションでひとり夜のお茶会です。ありがとう、たまのギルティ・プレジャーよ。

 

やましい楽しみとたまにタッグを組んでもいいじゃないかと自分を許せるようになったのは、力みが抜けたときに、ありがたい助言が心に入ったり、ひらめきにつながったり、無意味なドツボにはまっている自分に気づけるもんなんだなとも知ったから。だから、もうそもそもギルティだとも思っていないかも。

 

そうそう、アメリカの禅センターのキッチンで働いていたときにも、思ったことがありました。

 

アメリカ人やオーストラリア人たち西洋勢がのきなみ敗退する、パセリの葉を茎からすべて摘むという地味で単純な作業があります。

 

変化を好んで目移りする彼らにとって魅力のないこの仕事。でも重いものを運んだり、トイレ掃除やコンポスト作業の格闘とは違って、ある意味気楽な作業でもあるんです。必要なスキルは、忍耐力のみ。

 

ただただ3時間以上黙々とこれを行い、さらには他の全員が残したまるでだだっ広い草原のようになった山盛りのパセリを請け負っていたら「なんて忍耐強いの!」とマネージャーにたいそう驚かれました。

 

でも、これってわたしたちにとってそんなにびっくりすることじゃないと思いませんか。いちいち文句つける前に、とりあえず目の前に来たものはやるっていう精神というのは。

 

アメリカのスピリチュアルセンターに限りかもしれませんが、私たちがやる8割程度の頑張りって、それもうすでにところにより実は10割レベルだったりするもんなんだなぁと。ハッと気づかされましたね。

 

「あれはダメだ」「これをこうしたい」と自己主張バリバリな彼らに囲まれ、「あたしって賢そうな意見が言えなくってダメだなぁ」「意志ってもんがないのかな」と自分をクズみたいに思っていたけど、あえてそんなふうにワーワー言う必要もないんだなと。ただ目の前のことを素直にやるっていうのも力なんだと、反面教師的に教わって救われたんです。

 

そこで業務スキルを伸ばそうと、120%の力でパーフェクト以上の仕事をしようとするよりも、力みを8割ぐらいにして、残り2割で周りの空間、空気を感じながら、ジョークで和ますぐらいのペース配分にしたほうが結果うまくいくんだなともわかりました。いままで全力だった力みが抜けました。マジシャンみたいに、手のひらからふわぁっと白い鳩が飛び立つような、なんかそんな気分。

 

あいつデキるな、より、

あいつと一緒にいるとなんか嬉しいな、って思われたほうが結果、全員がハッピーになるんだなぁと。アメリカは特にユーモアが重視される文化というのもあるでしょうが、帰国直前にしてようやく気づくとは。

 

「デキる」と思われないといけない、英語も上手に話せるようにならないとダメ、もっとスピーディーにたくさん仕事しないと、と信じ込んでいた世界観がザザザザーッと音を立てて崩れた瞬間でしたねぇ。

 

わたしは油断すると文章でもなんでもすぐ暑苦しくなるから、そろそろ夏も本番だし、このあたり気を配りたいと思います。

 

わたしたちにそもそも備わっている我慢強さや周囲を気遣える力に、リラックスしたり楽しんだりできる緩めた心。

これらが掛け合わされると、本当に大きな力になると思います。